上司を甘やかす方法
急に恥ずかしくなって唇を離すと、
「…史花さん。言って、ちゃんと。」
と両頬を両手で包み込むようにしながら
わたしの目を合わせてきた。
「…好き。すごく。」
その言葉を合図に、
さっきの合わせるだけのキスとは
比べ物にならないくらい、深いキスが続く。
途中で苦しくなって、
斎藤くんにもたれかかるとようやく唇が離れた。
「可愛いすぎる。」
「…斎藤くん、いっぱいありがとう。」
これは心からの思い。
わたしのことを知ろうとしてくれたこと。
こんなわたしを好きだと捕まえてくれたこと。
「史花さん、好きだよ。」
「わたしも、、好き。」
倉持さんは、あの日わたしに話してきた時、
お気に入りの斎藤さんが取られるという、
嫉妬心からわたしに言ったのだけれど、
その後の最近のわたしと斎藤くんの様子の変化に
気付いていたらしい。
そして自分のしたことを後悔して、
居ても経ってもいられなくて、
斎藤くんに伝えたそうだ。
後日、わたしにも謝罪をしてきた。
でも、そんなこと、
ただのきっかけにしかすぎなかった。
自分に自信が持てなくて、
相手を信じられなかっただけ。
だから倉持さんには何も思っていない。
もちろん斎藤くんも彼女に対して
その後今まで通りに接していた。