上司を甘やかす方法


結局たこ焼きより先に
史花さんを頂いたんだけど、

少し眠っている史花さんを見て、
何だか色んなことを思い出した。

確かに雨の日、彼女はすごく顔色が悪かった。
あれはまだ転職してすぐの頃、

「大河内さん?調子悪いんですか?」
と、書類を出す時に尋ねると、
少し困ったように笑って、

「全然!大丈夫大丈夫!元気だよ!ごめんね!」
と、少し手を止めていたパソコンに向かった。

それからもいつも通り。

そのうちお昼休みになり、
社食から戻ってくると、
珍しく給湯室に史花さんの姿が。

覗かないと見えない場所に立ち
壁にもたれ眉間にシワを寄せて目を瞑っていた。

だけど、まだこの時はまだあまり親しくなく、
そんなに他人に深入りしない自分の性格が
邪魔をして、その後彼女には声をかけず
1日を終えた。

それでも次の日には
かなりスッキリした表情になっていて、
心の中ですこしホッとしたのを覚えている。


彼女が辛い時に、辛い、と言える存在に
少しはなれたんだろうか、と言う気持ちと

また一つ彼女を甘やかすことが出来る、
と思った。




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