上司を甘やかす方法


「じゃあ斎藤さんは、
前職何されてたんですか?」

倉持さんの言葉に
「公務員だよ。お役所仕事。」
と、答えた。

「えーー!勿体ない!!
なんで辞めちゃったんですか!
絶対福利厚生もしっかりしてるし、
安定だったじゃないですか!」

「でも、今の仕事の方がやりがいあるよ?」

と、答えると、

「分かんないなー。全然。」
と、倉持さん。

「まあ、でもわたしは
やりがいあるとか言ってくれて
すごい嬉しいけどなー。
一緒に仕事したいって更に思えたよ。」

と、大河内さん。


この会話面倒くさいなーと思ってただけに
さらりとしていながら、渡に船だった。

「俺ら全員、ずっと同じ部署だもんなー。」

と、棚田さんも話を変えてくれた。




その後は他愛もない話が主で盛り上がっていた。
しばらくすると、
主任が戻って来ていないことに気付いた。


お手洗いにもいなくて、
店の前に出てみる。

「大河内さん?」


「あー、斎藤くん。大丈夫?楽しめてる?」

と、にこりと笑った。

「はい。大河内さんは大丈夫ですか?」

「うん、全然大丈夫!ありがとう。」

「お酒強くないんですか?」

「そんなことないよ?
外で飲んでたら、気も張ってるし
酔ったりはしないかなー。」

なんだかこの人は本当に
色んなことに気を回していて、
疲れないのだろうかと思った。

「斎藤くんはすごいねー。」

「何がですか?」

「だって、職種変わったのに、
全然動じてないじゃん。いつも落ち着いてる。」

「そんなことないです。」

「いやいや、本当に。
一目置いてますよー。」

「それはどうも。」

「嘘だと思ってるでしょー。
本当だよー?」
と笑う大河内さんが
素直に可愛いと思ってしまった。

「はいはい。」

「もー、さあ!みんな待ってるし戻ろっか。」

「はい。」




そんなこんなで、
はじめてのチーム飲み会は
思ってたよりもすごく楽だった。
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