嘘恋のち真実愛
「芦田さん、おはようございます。なにかありました?」

「あ、おはよう。ううん、なにもないよ」


出社してきた鈴川くんに聞かれて、素早くファイルを閉じた。見られていないよね?


「メール、部長からですか? あれ、部長はどちらに?」


差出人の名前は、認識されてしまったようだ。でも、内容までは見ていないと思いたい……。返事をしながら、話題を変えないと……。


「あー、うん、そうだけど。えっと、部長はたぶん上に行ったと思う」

「上ですか? もしかして副社長のとこですかね? 」

「なんで副社長のところだと思うの?」

「おふたりは、友だちなんですよね?」


お互いに疑問を投げかけ、首を傾げた。副社長と従兄だということは、秘密の話にしていたが、それを隠すために友だちと偽っている?


「あのふたりって、友だちなの? 私は初耳だけど、誰もが知っている情報?」

「いえ、確認してはいないので……仲良く話している姿を何度か見たから、勝手に友だちだと思っていました。実際どうなんでしょうね?」

「さあ……」
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