嘘恋のち真実愛
両腕をさすりながら、征巳さんからのメールで、疑問に感じたことを訊く。彼は私の話に食べながら耳を傾けていた。


「連絡は父親の秘書から、多分前日に届くと思う。母親は気まぐれなところがあって、食べたいものがコロコロ変わる。あの人に逆らわないほうがいいから、みんな従っている」

「お母さん……気難しい方ですか? 私の父の職業を尋ねた人は今までいたことがなく……本当に訊きます?」

「気難しいかどうかの感じ方は、人に寄るかな。社交的で好奇心旺盛な人だから、いろいろ話してくるだろうし、ゆりかの家族のことも興味をもつと思う。嫌な思いをするかもしれないけど、俺が絶対に守るから」

「はい、お願いします」


今困ったときに頼れるのは、征巳さんしかいない。彼を本当に信用しているのかと、これまた疑問になるけれども。

新たに出た疑問には、自分で答えを出さなければならない。だから、今はただお願いするしかなかった。


「挨拶の仕方は、会社でのゆりかでいい。服は当日の午前中にでも、買いに行こう」

「服、新調するんですか?」

「うん、この日のためにわざわざ用意した感じにしたほうが好感を抱いてくれると思う」

「わかりました」
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