嘘恋のち真実愛
余計な出費になるけれど、服ひとつで与える印象は違ってくる。征巳さんの両親に婚約者だと認めてもらうためには、息子である彼に見立ててもらうのが失敗しないだろう。

彼は、私の疑問にひとつひとつ答えを出してくれた。


「父は、会社を経営している」

「経営……えっ、社長さんですか?」


秘書がつくような立派な役職の方なんだと思ってはいたが、まさか社長だったとは……。


「ちなみにこのマンションも父の会社の所有物」

「は? このマンション? たしかここは、オーエ不動産の……オーエ……あ! 大江さん!」

「うん、そう」


閃いて、納得する私を見て、征巳さんは穏やかに微笑む。

これで、ずっと謎に感じていたことも解明出来た。このマンションを所有している会社の息子だから、こんなお高い部屋に住める……羨ましい限りだ。


「いいですね、こんな素敵なところに住めるなんて」

「一応俺も手掛けたマンションだから、愛着はあるし、素敵と言ってもらえるとうれしいね」

「征巳さんが手掛けた?」

「うん、そう」
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