嘘恋のち真実愛
「こんな答えで大丈夫でしょうか?」

「うん、いいね。これは婚約者役として、考えた内容だよね? ゆりかの本心ではないよね?」


良いと言ってもらえたけど、気持ちを探るような目で確認され、心臓の動きが速くなる。

征巳さんは、婚約者役としてのパーフェクトな気持ちを求めている。だから、納得してもらえる返事を考えた。


「はい。婚約者役として、征巳さんのご両親に納得してもらえる答えを考えました」

「うん、そうか……割りきれているんだね……でも、本心だったら、うれしいなと思ってしまったよ。うんうん、気持ちがこもっていて、いいね」

「気持ちがこもっているように聞こえたなら、良かったです。明日も自信もって答えますね」


征巳さんの言う『うれしい』も本心ではない。明日で終わる偽りの関係に本心は必要ない。

うん、必要ない……今夜一緒に買い物して、料理したことが楽しくて、つい素の自分で接したけれど、それは明日へ繋げるための演技の一環だと思い込むようにする。

親密に見せるためだ。

食後の片付けを終えて、征巳さんが先に入浴を済ませた。
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