嘘恋のち真実愛
「全部好きだから結婚したいと思ったんだけどね。どこかとあげるとしたら、そうだな……」


全部好きの答えに、心が大きく揺れる。嘘の気持ちでも、続く言葉を聞き漏らさないようにと耳を傾けた。


「真面目で、がんばり屋なところも好きだし、俺にだけに見せる甘えた顔がかわいくて、好きかな」

「ほー。征巳がのろけるとは驚きだな。それだけ、ゆりかさんを大切にしているんだね」


お父さんは目尻を下げて、笑った。しかし、お母さんは不機嫌そうな顔をして、私を見据える。


「ゆりかさんは、征巳のどこが気に入っているの?」


厳しい目を向けられて、用意していた言葉が飛んでしまった。脳内、真っ白だ。どうしよう……早く答えないと怪しまれる……。


「堂々と言える部分がないのかしら?」

「いえ、あります!」

「ゆりか、立たなくてもいいよ」


思わず立ってしまった私の手首を、征巳さんが掴んだ。冷静に答えなければいけないのに、何をしているのだか……落ち着きがないと思われてしまう……。

座り直して、小さく深呼吸をする。動揺は隠さなければいけない。
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