嘘恋のち真実愛
寝顔を見ていると、こちらまで眠くなる。だけど、私まで寝てはいけないと、マンションに到着するまでの間、気分を紛らすために外を眺めた。


「征巳さん、起きてください。もうすぐ着きますよ」

「んー、ゆりかが目覚めのキスしてくれら、起きるよ」

「は? 何を言っているんですか……寝ぼけていないで、さっさと起きてください」


軽く揺すっていた私は、征巳さんから離れて、再度流れていく景色を見る。

『Kenアイランド』が見えてきた。


「ゆりか」

「えっ……わっ! 近いです!」


振り向くと、すぐ近くに顔があった。危ない……少しずれていたら、キスしてしまう……。征巳さんの肩を押す。


「なんだよ……婚約者に冷たいな」

「もうその役は終わりましたよ」

「ああ、そうだね……それなら、上司に冷たいなと言い直そうか?」

「はい? いえ、別に言い直さなくても……」


どう言い直しても、私の態度が冷たいというのには変わりはない。
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