嘘恋のち真実愛
甘美な報酬
休み明けの月曜日、早々と征巳さんから業務外連絡のメールが届いた。彼の行動はいつも早いし、驚かされることが多い。

夏は週末にイベントが集中していて、休日出勤をせざる得ない状況になる。平日に休みを振り替えられるけど、土日に休めないのはつらい。

予定も立てにくい。

そんな状況の中で、征巳さんは無謀な計画を提示した。私たちの振替休日を合わせるというのだ。

しかも、日にちを決められていて、この日に休むよう届けを出すことまで指示されている。

八月上旬のとある平日の二日間が指定日となっている。二日間って……まさか泊まりの旅行?

『この旅行は例の褒美であるから、拒否は受け付けない』とまで書かれていた。むちゃくちゃ自分勝手な計画だ。

こちらの都合を訊くことなく、決めるなんて……。こんな憂うつな旅行は褒美にならない。

抗議したいけど、拒否は受け付けないというから、無理な労力になるかな。抗議はやめておこう。


「芦田さん、どうしたんですか? 顔が険しいですよ。これ食べてください」


パソコンの画面を睨み付けていた私に、鈴川くんがチョコを差し出す。
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