嘘恋のち真実愛
北海道旅行から帰宅した翌日、征巳さんの車で出勤した私たちは、駐車場で副社長に遭遇する。


「征巳、芦田さん、おはよう。朝から仲良しだね」

「おはよう。まあな」

「まあなって……顔が緩んでるぞ。芦田さん、こいつ鬱陶しくない?」

「えっ、あ……ちょっとだけ」


私が苦笑すると、副社長は笑った。征巳さんはそんな副社長をじろりと睨む。旅行から今日まで緩んでいた彼の顔がやっと引き締まる、

こんなに緩んでいて、大丈夫かなとひそかに心配していたから、副社長がズバリ言ってくれて良かったかも。

昨夜征巳さんは副社長に「結婚するから」と早々と報告をしていた。社内恋愛は禁止されていないが、知らせておいたほうがいいと征巳さんは判断したのだった。


「そうそう、しっかりと気を引き締めて仕事して。じゃないと、芦田さんに幻滅されるよ」


副社長は手をヒラヒラさせて、先を歩いてった。私は繋がる手を軽く振って「征巳さん?」と呼ぶ。

彼はぼんやりしていた。


「ん? ああ……幻滅しないでね」

「えっ? しませんよ。副社長にからかわれましたね」

「からかわれた? あー、そうか、あいつ……」
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