嘘恋のち真実愛
「ダメだよ。寝てないと……今日は休むんだね」

「休み? いえいえ、行きますよ。こんな熱は熱ではありません」

「は? なにを言ってるの? それよりも、ほかに具合悪いところはない? 頭が痛いとか喉が痛いとか。あ、お腹もどう?」

「頭とお腹は大丈夫です。喉が少し痛いかな」

「喉か……耳鼻咽喉科のほうがいいかな。いや、やはり内科かな……」


征巳さんは私に夏用の肌掛け布団をかけてから、スマホを操作していた。まさか病院を探しているのでは?

彼は険しい表情でなにかブツブツ言っている。


「征巳さん、病院には行かなくても平気ですよ。このくらいの熱なら、市販の風邪薬を飲めばきっとすぐに治ります」

「は? 病院に行ったほうがいいに決まっているだろ?」

「決まっては、いませんよ。食欲もあるので、気合いで治します!」

「は? 気合い? ゆりかはなにを言って……あ、食欲があるなら、まずは朝ごはんだな。下まで行くのは大変だろうから……そうだ! ちょっと待っていてくれる? ちゃんと寝ていること」


私の見解に納得しない征巳さんは「は?」を連発していた。
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