嘘恋のち真実愛
「うん、ありがとうございます」


征巳さんはこんなにも心配性だったのかと思うくらい、ここを出るまでの間に何度も私の体温を確認した。

病院行かなくてもいいのかと、何度も聞いてきた。

私をひとりにするのが、かなり不安らしい。大丈夫だからと強く伝えて、いつもよりも出るのが遅くなった彼を見送る。

彼の優しさはうれしいのだけど、ちょっと疲れてしまって、ため息を漏らした。

その後も彼の心配は続き、時間ができるたびに連絡が来た。

今日中になんとか体調を戻さなくては、彼の仕事に支障が出てしまう……とほとんどベッドで過ごす。

征巳さんは朝に宣言したとおり、いつもよりも早くに帰ってきた。しかも夜ご飯用にと、懐石弁当まで買ってきたのだから、会社を出たのはかなり早かったのではないかと思う。


「わあ、美味しそう! このお弁当、どこで買ってきたんですか?」


私がたまに買う弁当は、コンビニやデパ地下のが多い。征巳さんが買ってきた弁当は、容器も中身も豪華な感じで、高そうに見えた。

それに、普段なかなか食べれない鰻が入ってる……。これを食べたら、元気になれそうだけど、やはり気になるのはお値段。
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