嘘恋のち真実愛
無敵のシナリオ
翌週、部長からは業務以外での接触がなくて、穏やかな日々を過ごした。そのまま何事もなく週末を迎えて、のんびりした休日を過ごしたいものだが、その前に大事な任務を遂行しなければならない。

週末の金曜日に近づくにつれて、気持ちはどんどん重くなっていく。避けられるなら、避けたいけれど、受け入れてしまったからにはやらなくては……。

金曜日の午後になって、胃が痛くなる。


「芦田さん、そんな大きなため息をついて……どうしたんですか？」

「あっ、ため息出てた？」

「無意識ですか？」

「そうみたい」


鈴川くんの指摘に口を押さえて、苦笑する。彼はちょっと呆れた顔をしたが、私につられたのか同じように笑う。

鈴川くんは気遣いはするけれど、相手が話さないなら、深く聞くことをしない。聞かれないのはありがたい。

部長とのことは、秘密なのだから。

今日の部長のスケジュールは、得意先での打ち合わせ後、直帰となっていた。打ち合わせは夕方までの予定だから、終了後にホテルへ行くのだろう。

私の指定された時間は八時……帰宅してからまた出るのは面倒だし、お腹も空く。
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