嘘恋のち真実愛
ホテル最寄り駅の構内にあるカフェでシーフードドリアを食べてから、重い腰をあげた。

戦ってくるか。

部長のいう変な女から、どんなことをしてでも部長を奪わなければいけない。それをするために来たのだから。

略奪出来ずに終わったら、意味がない。

でも、自信ないよ……。

弱気になっていると、スマホが部長からのメッセージ着信を知らせる。部長は、まだ食事中のはずだ。

もしかして中止とか……淡い期待は即消える。

『予定通り、実行』か……短いメッセージに本日何度目か分からないため息を漏らす。

八時十分前、指示された場所で待機。胃がまたキリキリと痛む。トイレに逃げたいけれど、逃げたら怒られるだろう……。

出てくる部長を見逃さないようにと、入り口から目を離さないでいる。

あ、出てきた……はやく行かなくちゃ……。

ヒールの音を響かせて、ふたりの元へと急ぐ。部長の隣に寄り添う女性は、私と変わらないくらいの年齢で、とても綺麗な人だった。

全然変な女には見えないし、こんな人から奪えるのか不安になる。

10%くらいしかなかった自信がゼロになる。近付くも思わず怯む私を部長の視線が捉えた。
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