嘘恋のち真実愛
「あなたこそどちらさまですか?」

「私は、征巳さんの彼女です」

「未央子ちゃん、彼女は俺の婚約者の芦田ゆりかさん」


私の説明にすかさず部長が補足する。その補足に未央子さんというきれいな女性は「えっ?」と目を見張った。

私も心の中で『ええっ!』となっている。婚約者という設定ではなかったのに、なぜ恋人から婚約者に昇格されているの?

部長は添えられていた未央子さんの手をサッとはずして、私の隣に来た。混乱している私はどうしたらいいのかわからなくて、彼を見上げた。


「ゆりか、ごめん。不安にさせちゃったよね。未央子ちゃんは、ただの後輩だから」

「ああ、そうなんですね。ただの後輩の方でしたら、全然気にしませんよ。征巳さん、行きましょうか」


部長が話を切り出してくれたからなのか、なぜか冷静に応えることが出来た。

部長は私にうなずいたあと、体を寄せて腰に手を回す。予想外の接触に体が軽く揺れた。腰に手を当てられているだけなのに、体温が上昇していく。

冷静さを取り戻していたのに、こんなことで動揺してしまうなんて……。
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