嘘恋のち真実愛
「ゆりかは、本当に恥ずかしがり屋だね。でも、照れるのもかわいい」


さらに予期せぬ甘い台詞を言われて、私の顔は沸騰した。この人、そんな甘いことを言う人だったの?

演技なのだろうけど、さらりと言えることがすごい……。一方演技に動揺している自分が、恥ずかしい。顔を熱くした状態で部長を見ると、彼は優しく微笑む。


「ほんと、かわいすぎ。早くふたりだけになれるところに行こうね」

「は、はい……あ!」

「ん、なに?」

「手……」


変な女性から離れる時は手を繋ぐ……ここは手を繋ぐ予定のシーンだ。

私の伝えたいことがわかったのか、部長は「ああ」と思い出したような表情をしてから、笑う。


「ゆりかは甘えん坊さんでもあるよね。手を繋ぐのが好きだものね。はい」

「だって、征巳さんの手、あたたかくて好きだから」


差し出された手をぎゅっと握りしめる。こういうやり取りで握るのではなかったけど、とりあえず手を繋ぐことが出来た。

最後だけでも一応うまくいけたことに安堵したら、口許が緩んだ。
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