嘘恋のち真実愛
置かれたビールで、すぐに喉を潤した。「はぁー」と小さく息を吐く。仕事終わりのビールは美味しい。

セットのサラダとスープは、マスターが持ってきてくれた。マスターはチラッと壁時計を見てから、市原くんの肩を叩く。


「市原、もうあがっていいよ」

「ありがとうございます! じゃ、ゆりかさん、また……」

「ああ、うん。お疲れ様ー」

素早く青色のエプロンを外して、カバンを持って出ていく市原くんにヒラヒラと手を振る。なにやら急いでいる様子の彼を見て、首を捻った。

慌てる市原くんを見たのは初めてだったから。スープを飲んでいると、美味しそうな匂いが近づいてきた。


「はい、おまたせー」

「わあ!」


目の前に置かれたハンバーグに思わず感嘆の声をあげる。やっと食べれる!

ひと口食べて、頬を押さえた。自然と顔の筋肉を緩む。


「ああ……美味しい。ハンバーグはここのが一番好き」

「それはどうも、どうも」

「そういえば市原くん、珍しく急いでいましたね」

「うん、これから彼女の家に行くんだって」


マスターの返事に私は「えっ?」と固まった。そんな私にマスターは不思議そうな顔をする。
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