嘘恋のち真実愛
しばらく部屋から見ることのできなかったスカイツリーが、青空の中にくっきりとそびえ立っている。


「この角度から見たかったんでしょ?」

「別に見たかったのではなく……」

「うちのマンションのせいで見えなくなったと言ってたじゃないか」


以前見えていたものが見えなくなって寂しかったが、見たいとは言っていない。昨夜ホテルから見たし、今朝も見た。

部屋から見えなくても、別の場所から見る機会は日常的にも少なくはない。

だから、部屋を把握しておくためにとついてきだけなのに、まさかスカイツリーをまず見せられるとは予想外だ。

昨夜ホテルで反応したから好きかと、思われたのかな。まだ展望室にも行ったことがないのだけれど。


「部長は、のぼられたことありますか?」

「いや、ないな。下のショッピングモールには行ったことあるけど」

「私も同じです」

「そうなのか。好きみたいだから、行ってるのかと思った」


やはり好きだと勘違いされていた。嫌いではない、どちらかというと好きかな……中に入るよりも外から見るほうが好きだけど。
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