嘘恋のち真実愛
「よお、今日もかわいいな」

「はっ? えっ?」

「なんか返して……」

「なんか? えっと……ありがとうございます。部長もカッコいいですよ?」


部長が言う挨拶の言葉が『かわいい』とは……そんなことを軽々しく口にしたことが信じられなく、私は一瞬呆けた。

ラブラブというよりも、ナンパのような軽い感じがしたけど。

返事と言われて、すぐに返したが、この返事が正解なのか不安で疑問形になってしまった。

一般的に見て、カッコいいは間違いではないはず。誰が見てもカッコいい人だもの。

しかし、「ダメだな」と呟かれる。ダメ出しされた……。

どうしたらいいか、全然わからない。すがるように部長を見ると、彼は小さなため息をついた。


「できるだけ自然な感じにしてほしいけど、今は仕方ないか。もっと親密な関係になるようにしよう。ほら、手」

「手?」

「繋ぐんだよ。本当に婚約者なのかと疑われないデートをするためには、なにが必要?」

「えっ? なにがって……」


差し出された手に手を乗せて、首を傾げた。手を繋ぐことで距離が縮まったようには思うけど……それは部長が求めている答えではない。
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