嘘恋のち真実愛
彼は自分で答えを導けるよう、ヒントを出す。


「婚約者というものは、どういうもの?」

「婚約者は結婚を決めた相手だから……一生添い遂げたいという人だと思います」

「うん、そうだね。で、どういう感情があって、結婚を決める?

「それは……好きという感情だと思います」


部長から問われる内容は、業務上での内容とは明らかに違う。今はプライベートな時間であって、私たちは婚約者という設定を確認している。

だけど、内容云々というより、部長の聞き方や私の答え方はオフィスの中にいるようだ。こんなやり取りをしてして、親密さを出せるのだろうか。

まだまだ不安が拭いきれない私の手を部長は、ぎゅっと握りしめた。

手を繋ぐことから始めようという感じに。


「俺を好きになること」

「は? 部長を?」

「好きという気持ちを、誰が見てもわかるようにすることが必要。本気で好きにならなくてもいいから、俺を好きだと思い込むようにするんだ。そういう気持ちを持てば、自然な婚約者になれるだろう」

「あー、そうですね。でも、難しい……」
< 49 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop