嘘恋のち真実愛
「うん、キッチンは自由に使って。俺の分も作ってくれる?」

「食べたいというのであれば、お作りしますよ。味の保証はできませんけど」

「ぜひ、お願いしたい。慣れているとはいえ、毎日同じようなものばかりだとやっぱ飽きるんだよね。買い物は明日、仕事帰りに行こうか?」


気持ちが落ち着いてきていた私は、穏やかに頷いた。落ち込んでいた気持ちがどんどん上がっていく。

いつもはひとりでやることをふたりでやるのは、楽しそうだ。どうせやるなら、楽しんだほうがいい。

私たちの会話を盗み聞きしていたらしい店長が、しまりのない顔で声を弾ませてきた。


「おー! 仲良く買い物に行くなんて、いいねー。とうとう本格的に付き合うことになったの?」

「んー、本格的というか……いろいろ一緒にやることでより近い存在になるんじゃないかなとは思っている」


店長に返事をする部長をしげしげと見る。


「ん? ゆりか、どうした?」


私は一度視線をテーブルに落としてから、再度彼を見据えた。『なんでもない』という答えではたぶん納得してくれないだろう。
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