嘘恋のち真実愛

「別に深い意味はないんですけど、より近い存在とはどういう存在のことをいうのかなと思いました。あ、答えを求めてはいないので、気にしなくていいですよ。ただ思っただけですからね」

「まったく……ゆりかは謙虚だよね。気になることはどんなことでも聞いて。なんでも答えるよ。それで、より近い存在の答えだけど」


答えを言わなくていいと言ったのに、律儀に答えようとする彼は、私よりも真面目かもしれない。

しかし、部長よりも先になぜか店長が答えた。


「いやー、ゆりかちゃんさー。大人なんだから近い存在がどういうものかくらいわかるよね?」

「だから、答えは求めていないと言いました」

「いいなー。俺もより近い人と、ラブラブしたいよ」


両手を胸の上で組んで、どこか遠くを眺めるような仕草をした店長に苛立つ。


「店長、鬱陶しい」

「賢さん、うざい」


同時に悪態をついた部長と私は顔を見合わせてから、「プッ」と噴き出した。


「うわっ、なんでふたりはそんなとこで気が合うかなー。はいはい、好きにラブラブしてくださいね」
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