嘘恋のち真実愛
呆れたように肩をすくめた店長は、厨房に消えた。入れ替わりに市原くんが出てくる。彼はチキンステーキが乗せられたプレートを持っていた。


「はい、お待たせしました」

「市原くん、いたのね。姿が見えないから、休みかと思ってた」

「あっちで在庫確認していました。でも、話し声はちょっと聞こえましたよ。ラブラブでいいですね」

「市原くんまでそういうこと言うのやめてよ」


私は行儀悪く持っていたフォークを市原くんにビシッと向けた。


「いいじゃないですか。おふたり、お似合いだと思いますよ」

「お似合いか、そう見えるならうれしいね。ねぇ、ゆりか」

「ええ、そう見えるなら何とかなりますかね?」

「何とかなるよう、さらに新密度を上げよう」


部長の発言に市原くんが「おおっ!」と手を叩いた。そんな応援するような拍手はやめてほしい……。

部長は拍手されたのがうれしいのか、満足げに顔を緩めて、チキンステーキをカットしていた。

私はまたいろんな気持ちが入り交じる。やっぱり落ち着かない。このあと、どうなるのだろう。
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