嘘恋のち真実愛
入浴を終えた私は、寝室のドアを少し開けて、中をそっと覗く。征巳さんは、右半分にうつ伏せになって、スマホをいじっていた。

寝室に入らず、リビングに戻っても大丈夫かな。ソファーで寝てるのを見たら、いくらなんでも起こしはしないだろう。


「あ、ゆりか」

「わっ……」


ゆっくりとドアを閉めて、リビングへ戻ろうとしたのに見つかってしまう。素早くベッドから降りてこっちへ向かってくるから、私はドアノブを持った状態で動けなくなった。

今急いで距離をあけても、すぐに掴まってしまうに違いない。


「待ってたよ。こっちに来て。寝ようね」


とんでもない誘い文句だ。本当の婚約者でなくても、ドキッと胸が高鳴った。

私の胸の高鳴りを知らない征巳さんは手を引いて、ベッドまで連れていく。彼はポンと先ほど自分が寝ていた隣のスペースを叩いた。


「ゆりかは、こっちね。ほら、寝て」

「はい」


言われるまま、体を横にする。ダブルベッドだからなのか、枕はふたつ置かれていた。そのうちのひとつに私は頭を乗せる。
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