嘘恋のち真実愛
征巳さんは私の様子を確認してから、隣に寝転ぶ。私の身体は天井に向いているが、彼の身体は横向きだ。それも、私のほうに向いての横向き……。

なぜこっち向き?

上を向くか下を向くか、あっちを向いてくれないかな。


「ゆりか、おやすみ」

「おやすみなさい……」


なにもしないと言ったけど、なにかされたらどう対処しようかと身構えていた私は「おやすみ」と言われて、力が抜けた。考えすぎて、力みすぎていた。

先に目を閉じた征巳さんを見て、安堵する。これで安心して眠れる……まぶたが重くなってきた。


「ゆりか……」

「へっ? 」


完全に目を閉じたところで、名前を呼ばれる。既に寝ていると思っていた人に呼ばれて、変な声を出してしまう。

首を横に動かして、目を閉じていたはずの征巳さんと目を合わせた。


「まだ足りないと思うんだ」

「なにがですか?」

「新密度……明日はもっと……」


もっと、なに?

続きを言わないで、彼はまた目を閉じてしまう。

何が言いたかったのか、聞きたかったのに……。心にモヤモヤするものを抱えたまま、同居二日目の夜は更けていった。
< 90 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop