嘘恋のち真実愛
運転する征巳さんの顔色を窺う。微妙な笑顔は、消えていた。私の答えにならない返事で、機嫌を損ねていないといいのだけれども。
運転中は走らせることに集中したいのか、彼はひと言も言葉を発しない。私も静かに座っていた。会社の駐車場に車をとめてから、征巳さんは私を見る。
「どうしたらいいのか、考えたのだけど」
「はい」
運転中に考えていてくれたようだ。ただ征巳さんの顔色を窺っていただけの私は、自分の情けなさにいたたまれない気分になった。
だから、せめて運転しながらも考えていた征巳さんの意見にちゃんと耳を傾けようと姿勢をただす。
「俺たちにはスキンシップが足りないと思わない? 自然に触れあえる関係は、誰が見ても親密に見えるものだと思う」
「確かに。でも、どんなふうに自然に触れるのでしょうか?」
「そうだな。例えば、こんなふうに何気なく手を触れるとか」
征巳さんの手が私の手に重なる……とくんと胸が淡い音をたてた。
「例えば、こんなふうに頬を触るとか」
征巳さんとあたたかい手が私の頬を撫でる……どくんと心臓が跳ねた。
運転中は走らせることに集中したいのか、彼はひと言も言葉を発しない。私も静かに座っていた。会社の駐車場に車をとめてから、征巳さんは私を見る。
「どうしたらいいのか、考えたのだけど」
「はい」
運転中に考えていてくれたようだ。ただ征巳さんの顔色を窺っていただけの私は、自分の情けなさにいたたまれない気分になった。
だから、せめて運転しながらも考えていた征巳さんの意見にちゃんと耳を傾けようと姿勢をただす。
「俺たちにはスキンシップが足りないと思わない? 自然に触れあえる関係は、誰が見ても親密に見えるものだと思う」
「確かに。でも、どんなふうに自然に触れるのでしょうか?」
「そうだな。例えば、こんなふうに何気なく手を触れるとか」
征巳さんの手が私の手に重なる……とくんと胸が淡い音をたてた。
「例えば、こんなふうに頬を触るとか」
征巳さんとあたたかい手が私の頬を撫でる……どくんと心臓が跳ねた。