ありったけの愛を叫んで
少し寒くなり始めた10月中旬


こんな中途半端な時期に転校生なんてあんまりいないだろうな



ー鈴蘭高等学校ー



そう書かれた正門を前に、どうでもいいことを考える




生徒玄関の奥に待っていたのは私の担任


おじさんと来た時に一度だけ会った、大手会社の社長にとても礼儀正しく接していた担任は、今私と目が合って


「転校初日から遅刻なんて、お前ヤンキーなのか?」


なんて真顔で聞いてくる




「………。」


反応に困っていると、


「冗談だ、社長には言うなよ?」 と笑った






先生について廊下を歩いていると、ひとつだけザワザワとうるさい教室


"2のC" と書かれた教室


それは今日から私が通うクラス。




「転校生まだかなー」

「授業潰れてラッキーじゃね」

「初日から遅刻とか、ヤンキーなのか?!」


廊下にまでそんな声が聞こえてきた。


どうやらこの学校は、

"転校初日から遅刻 = ヤンキー" らしい




先生につづいて教室に入ると、だんだんと静かになる教室

突き刺さるような視線を感じてうつむいた


先生が黒板にカツカツと私の名前を書いて
チョークを置いた音が教室に響く



「ほら、自己紹介」


先生に促され、しぶしぶ顔を上げ、口を開く。



「琴宮美月(ことみやみつき)です

よろしくお願いします」



シン、となる教室


聞こえなかったのかな……?


不安になって先生を見ると



「それだけかよ!」 なんてツッコまれた


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