ありったけの愛を叫んで



バイクを停めて、木の幹に寄りかかって桜を見上げる私たちの手は繋がれている




「こんな綺麗なところがあるなんて、
全然知らなかった!

連れてきてくれてありがとね、朔夜」



「おう」




短い返事、それは私の大好きな声




朔夜はロマンチックな場所をいっぱい知っている


いつも私を幸せで満たしてくれる




ひらひらと落ちていく桜の花びらを見て思った


この時間が、永遠に続けばいいのに

私たちを縛る闇も過去もぜんぶ、桜色に塗り替えることができたらいいのに…







「ついてた」




朔夜の手が私の前髪に少し触れ、桜の花びらを掴んだ




「あ、ありがと…」




その視線が、絡み合う


春の暖かな風が、朔夜の前髪を少し揺らした


私をうつす揺れる瞳にとらわれて、目が離せない




朔夜の手が、私の頬にすっと触れる


優しく、包み込むような手つき


その顔がゆっくり近づいてきて、唇に柔らかいものが触れた





────────っ





キスされた




そう知ったのは唇の感触が離れたあとで、

目を逸らした朔夜の頬は少し赤い




それを見て、じわじわと私の頬も熱をもつ…




好き。

とてつもなく、好き。




桜の下、

ピンクの雪に包まれる世界には、私たち二人だけ




映画のワンシーンのようなファーストキスは


愛にあふれていた





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