ありったけの愛を叫んで

逆心

「そろそろお風呂入ろうかなー…」



小さくつぶやいて、服の少なくなった棚の中から下着や部屋着を探す



私は、またあの家に来ていた


でも、怖いとは思わない


あの日おばさんは、もう私を殴らないと言った


それが嘘だとしても、必ずヒーローが助けに来てくれる


私は過去を乗り越えて、強くなるんだ





約2ヶ月ぶりに結翔が家に帰ってきて、それを聞いたおじさんは無理やり仕事の休みを取り、家族での話し合いが行われた



不良達と絡んでいたことや、夜中にバイクを乗り回していたこと、全く家に帰らず学校にも行かなかったことについて


『ごめんなさい、もうしないから

バイクだけは取らないで』


と結翔があやまり、意外にあっさりと終わった家族会議




明日まで家にいると言ったおじさんに 朔夜との同棲がバレるわけにはいかない私は今日だけ泊まることにした




「あったあった」


ちゃんと下着も見つかって、お風呂に向かうため部屋の扉を開けたその時

階段の前に立つ黒い影が見えた




フードを被り、黒いパーカー、黒のスウェット姿の長身な男のうしろ姿



その姿を見て思い出す、いつかの悠の言葉







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