ありったけの愛を叫んで




──────────息が吸えない

口を開ければ入ってくるのは水




頭の中が真っ白だった




きっと波にのまれて足が滑ったんだと思う




じたばたと暴れても、上も下もわからない




ずっと願ってきた"死"

それを目の前にすると、恐怖が襲う


"死にたい"

そう願ったことを、暗い海の中で後悔した




死ぬってこんなにも苦しいの……?




怖い、怖いよ、誰か助けて……




真っ暗な海の中、どんどん深く沈んでいくみたいな感覚におちいる




助けになんて来るわけない。

もう、ダメだ。




そう思って力を抜いたその時──────





何かにグイッと引き寄せらて、一気に視界が明るくなった


肺が酸素を求めて急いで呼吸する

咳き込んでのどが焼けるように痛い




いつの間にか足がついて、引きずられるように歩いて砂浜に倒れこむ




「ゲホゲホッ ゴホッ うっ ハァ、ハァ……」


「おいあわてんな!

ゆっくり、吸ってー、はいてー」



その声に合わせて呼吸を繰り返す


肺が酸素に満たされていく

呼吸が整ってくると同時に涙があふれた




怖かった、苦しかった。
死にたいなんて簡単に願っちゃいけない。


そんな思いと


お父さんお母さんも死ぬ時、こんなに辛かったのかなという不安




頭の中はごちゃごちゃで、声を上げて泣いた


そんな私を、顔も見ていない誰かも分からない親切な命の恩人は

胸をかしてくれて、背中をポンポンしてくれた



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