ありったけの愛を叫んで
「俺は西野 悠(にしの はるか)

悠って呼んでね、美月ちゃん」



いきなり始まった自己紹介、なぜか私の名前を知ってるし、"づ" じゃなくて "つ" ってこともちゃんと知っててびっくりした




私の噂ってどこまで広まってるの?


絶対初日から遅刻のヤンキーだとか、ずっとうつむいてる根暗そうな奴とか……




まぁそんなことどうだっていい


関わらなければいい話






どこに向かっているのか分からない車の外の景色は、だんだんと高い建物が増えてきて、きっと街に入ったんだと思う




私の隣には、さっきから一言も話さない目をつむった神野くん


きっと私が今まで生きてきて見てきた中でいちばん綺麗なその横顔は
完全に話しかけるなオーラを放っている、、






外から見ると真っ黒で何も見えないのに、中から見ると意外と澄んで見えるこの窓の仕組みはどうなっているんだろう…


こんな状況で、そんなことを疑問に思う自分ってどうなんだろうかと しみじみ考えた






車が停車して、いつの間にか降りていた悠がドアを開けてくれる


どこまでも紳士な悠が差し出してくれた手を握って車から降りた




目の前には見上げるほどの大きなビル


1階はオシャレなカフェみたいな外見




神野くんは普通にそのカフェに入っていく


一方悠は、ドアを開けて私を先に通してあとから入るという完璧なレディーファースト




きっと悠はモテる


神野くんもちょっとは見習えばいいのに…







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