ありったけの愛を叫んで
服を着て来た道をもどり、扉を開けると悠が駆けつけた


寒くないか、ココアは飲めるか、暖房の温度もっと上げるか

なんて質問攻めにあい、


私は首を縦にふったり横にふったり、、




なんで海でびしょびしょだったのかと聞かれた時はドキッとしたけど、

"貝がらを拾っていたら靴が流されて、その靴を取ろうとしたら海に溺れて、それを神野くんが助けてくれた"


という思いつきのなんとも言えない嘘でごまかした


「へぇーあいつが?」 と少し考えるように悠が言ったけど、たぶんバレてないはず






帰りが遅くなることを心配した悠が家まで送ると言い出して、

何度断わってもダメとしか言わない悠にお礼を言いながら乗った、本日2度目の高級車


車の中で、あのお店は
お昼はカフェ 夜はバーになる

"Snow Storm" という名前だとか

シャワーを貸してくれたエプロンの男性は
蒼介(そうすけ)さんというのだとか

いろいろな話を悠から聞いた


シャワーも借りて良くしていただいたのに、名前も聞かずに帰ってしまうなんて申し訳ないことをしてしまった。

また今度お礼をしにこよう と、すっかり暗くなった窓の外を見て思う




救ってもらった命。


悠も蒼介さんも、あの店も、すごく暖かかった。


なんとなくだけど、生きる気力が湧いた気がする。




あのお店にも車の中にも、神野くんの姿はなかった



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