ありったけの愛を叫んで
「…する、ここでバイトする」


「ふーん」


聞いてきたくせに興味はないらしい




隣で肩ひじをついてブラックコーヒーを飲む神野くんはとても絵になる


見惚れそうになった私の目を引き剥がして再びメニューに意識を戻そうとしたけど、なんとなく、今しかない と思った




「あの、神野くん

この前は助けてくれてありがとう」


それだけ言って満足した私はメニュー覚えを再開…






「お前、悠のことは悠って呼ぶくせに、

なんだよ神野くんって」






できなかった、


思わず神野くんを凝視する






「朔夜でいい」


「へ…」


「見んな、朔夜って呼べっつってんの」




そう言って私の頭を片手でわしづかんでグイッと前を向かせた


突然のことすぎて頭が回らない


だいたいいつも話しかけるなオーラ全開なくせにいつ呼び捨てする機会があるのだろうか…




それから何も会話はなかったけど、
いつか神野くんと話す機会があるなら朔夜って読んでみようかな なんて、なんとなく嬉しい気持ちになっている自分がよく分からなかった





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