ありったけの愛を叫んで




それにしても高そうなソファ、そしてこの部屋の中はヤンキーの巣窟とは思えないほどに片付いていて、高級感が溢れている





「美月ちゃん、朔夜のこと 朔夜って呼んでるよね、最近」


スマートに向かい側のソファに座った悠にそんな質問をされる


「この前、朔夜って呼べって言われた」


「へー」


何故かニヤニヤ顔の悠 の後ろから…




「おい」


いつの間にか戻ってきた朔夜になぜかにらまれていた




「お前はこっち」


そう言って王様席を顎でさす


…そこって朔夜専用みたいな感じじゃないの?




「いや、でも…」


「早く座れ」


はぁ、なんでこうも俺様なのかな


またちょっとイライラして、ドスッと3人がけの真ん中に座った




「ちげぇよ」


なにが違うのか、


さっきから口調も俺様、言ってることも意味わかんないしなんでか睨まれてる


悠だって絶対聞こえてるはずなのに助けてくんないし、うつむいてるけど肩震えてる
笑ってるのバレバレだから!




イライラが増して、朔夜を睨み返してやろうと思い顔をあげようとしたその瞬間




「うわっっ」


ふわりと体が浮いて、ソファの端に移動した


私の隣にドカりと朔夜が座り、雑誌を広げる


朔夜の脚はすごく長いのに、ど真ん中に座ってそれを開くから 私の座る範囲は結構せまい




どうしてだろう、最近自分はおかしい


こんな酷い目にあっているはずなのに、隣に座る男の横顔を見てなぜかさっきまでのイライラがスーッと消えていく…



そして意外と近いこの距離に、私の胸はドキドキと高鳴っていた







「おい!お前ら俺のこと忘れてねぇか?!

誰なんだよこの女!!!」




声がデカすぎて耳が痛い…


せっかくイケメンなのに、きっとこいつはモテないだろう。



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