ありったけの愛を叫んで
その瞳にとらわれて
やっぱりけっこう目立つなー…
バイトの休憩時間、私はトイレの鏡を見ている
目の下にできた暗い黒紫色のくま
今日は普段あまりしない化粧で隠したつもりだったけど、夕方まで効果は持たないらしい
最近あの夢のせいであまり眠れない日が続いていた。
カフェがバーに変わってお客さんも落ち着いてきて、少し厨房の奥のスペースで休ませてもらっていると
カウンターにいるはずの蒼介さんが顔を出した
「美月ちゃん、朔夜きたよ」
その名前を聞いて勝手に動いてしまう私の足
カウンターに出ると、座っている朔夜が私を直視してきた
…っていうか、なんかにらまれてる?
「お前…」
なんか顔についてるのかな
それとも私、なんかやらかしたかな
「なに?」
「やっぱいい」
え? なんだそれ、
よく分からない朔夜を横目にブラックコーヒーを入れながら、気になったことを聞いてみる
「今日、悠は?」
「あいつはさっき出掛けた」
「じゃあ、陽人は?」
「あいつは今日家のバイク屋手伝うってよ」
朔夜は1人で倉庫にいるのがつまらなくなったからここに来たのか
勝手に納得してコーヒーを渡す
「お待たせしました、ブラックコーヒーです」
「なんか、らしくなってきたよな、お前」
少し片方の口の端をあげて妖艶に笑う
たまに見せる朔夜のその表情は、私をドキッとさせる
ゆっくりコーヒーを飲む朔夜を前にしばらく無言で作業をしていたけれど、今日の夕方は少し混んでいて忙しかったせいか、
立っているのが辛くなってきた
ちょっと休ませてもらおう
そう思って厨房の方に歩き出すと、またまた朔夜が何か言った
「おい、やっぱお前、」
なに?って答えたくて振り返ろうとした時、視界がグラッと揺れて体に力が入らなくなって……
あれ…?
『おい!美月!!!』
めずらしく焦った朔夜の声が遠くで聞こえて私は意識を手放した