ありったけの愛を叫んで


駄々をこねる私が座るベットの隅に、たくさんの種類の果実入りゼリー、栄養ゼリー、スポーツドリンク


そして最後にはシュークリームが朔夜の手によって並んだ




「どれが食いたい」




真面目な顔で聞いてきた朔夜を見て、思わず私は吹き出してしまった


「んで笑ってんだよ」


「だってだって、病人にシュークリームはちょっと変でしょ!
甘すぎて食べられないよ!」


「お前 甘いの好きだろうが」


それはそうだけど!
今はたぶん体が拒否するよ!


まだ笑いがおさまらないままみかんの果実入りゼリーを指さして

「これがいい」 と言った




「ちょっとまってろ」


それだけ言って他を大きなビニール袋に雑に入れ、部屋を出ていく



すぐにスプーンだけ持った朔夜が戻ってきて、ゼリーの蓋を開けてくれる


不機嫌だけど、怒ってるけど、病人には優しいらしい


朔夜が優しいと変な感じだなー


そんなことを思っていると




「口開けろ」




いつの間にか朔夜の手には、ゼリーとみかんの果実がバランスよく乗ったスプーン


朔夜の顔は、いたって真面目




この人、天然なのかな…




「はやくしろよ」




有無を言わせない雰囲気の朔夜に従うほかなくて、口を開けてしまった




「おいしい」


「フッ そうか」


ひさしぶりに食べたゼリーは甘い




「ねぇ、さっきからゼリーばっかじゃん、

みかん食べたい」


「うるせぇ、文句言うな」




そう言って次はみかんだけ3つも載せて私の口の中に放り込んだ朔夜




「んー! いじわる!!」


「みかん食いてぇっつったろ」





そう言う朔夜はなんだか楽しそう


よく少女漫画とかで俺様とかドSがかっこいいとか言ってるけど、私には絶対分からない…



絶対こんなやつのな言いなりになんかなってたまるか!と強く意気込みながらみかんをもぐもぐ噛んだ




彼氏彼女、いわゆる恋人同士がするはずの
"あーん" というものをそれから何回か続け
あっという間にカップの中は空になった

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