ありったけの愛を叫んで
〜Side 朔夜〜
初めて美月にキスをした
おでこにだったけど、すぐに背を向けないと余裕がないのがばれてしまいそうで
簡単に言えば、やり逃げだ
女なんか、自分の欲求を満たすためだけのただの道具だった
今までたくさんの女にキスしてきたし、何人も女を抱いてきた
身体以外には全く興味もなかったし、身体を重ねる以外で関わることは面倒だった
あの日、海にズカズカと入っていく女を見て馬鹿な奴もいるもんだなと思った
こんな寒い中海に飛び込んで助けるとかダルい、見て見ぬふりをしようと思った
でも一瞬だけ見えたその女の顔が、その日転校してきた 目を奪われるような美しさの、でもどこか儚くて寂しそうな目をした女の顔と一致して、
どうしてか体が勝手に動いていた
最近 美月はよく笑うようになった
悠と陽人とも Black Shadowの奴らたちとも仲良くやってくれている
でもまだまだ俺はあいつを知らない、知れていない
ほっとけないとか守るとか言ったくせに、何もできていない
たまに寂しそうな顔で遠くをみつめる美月がいつかいなくなりそうで、消えてしまいそうで不安になる
「なぁ朔夜、そろそろ本当のこと 言った方がいいんじゃねーの?」
隣にいた悠が俺に話しかけた
「分かってる」
いまだに俺は、自分の正体を美月に言えていない
言ったらどんな反応をされるのか、怖くて仕方ない