ありったけの愛を叫んで
本当に久々に、この家族と食卓を囲む
夕飯は寄せ鍋だった
おじさんは最近仕事であったこと、部下のおもしろい失敗などを楽しそうに話し、みんなでそれに笑った
人間って怖い生き物だと思う
きっと他人が見れば幸せな家庭、
みんなが羨む仲良し家族
ピリリリ、ピリリリ…
携帯を耳に当てたおじさんはすごく焦っていた
「すまない、会社に戻らなければならなくなった」
あぁ、仲良しごっこはもうすぐ終わる──
大晦日の早朝、スーツ姿のおじさんは
「今年も一緒年越しできなくてすまない…」
悲しそうにそう言って、私達にお年玉を配った
おじさんが家を出てすぐ、花音はお年玉の袋を開け、中を確認している
私も部屋に戻ろうと思ったその時、持っていたお年玉が花音の手によって奪われ 袋が開いた
入っていたのは5万円
そのお札を見つめて花音が口をひらく
「なんで… なんでなの、あたしのパパなのに!
どうしてあたしはいっつもあんたより下なの?!」
そんな叫びが聞こえた後
ガンッ!
体を強く押されて肩に衝撃が走った
「いったぁ…」
近くにあったテレビ台の角で打ったらしい
「もう限界なの!
アンタのその顔見たくないの!!」
そう言って近くの花瓶を手に取った花音
やばい──────
そう思った時にはもう遅くて
ガシャーン!
私の顔の真横で、ガラスの破片が宙を舞った