ありったけの愛を叫んで



本当に久々に、この家族と食卓を囲む


夕飯は寄せ鍋だった


おじさんは最近仕事であったこと、部下のおもしろい失敗などを楽しそうに話し、みんなでそれに笑った




人間って怖い生き物だと思う


きっと他人が見れば幸せな家庭、
みんなが羨む仲良し家族




ピリリリ、ピリリリ…


携帯を耳に当てたおじさんはすごく焦っていた


「すまない、会社に戻らなければならなくなった」






あぁ、仲良しごっこはもうすぐ終わる──







大晦日の早朝、スーツ姿のおじさんは


「今年も一緒年越しできなくてすまない…」


悲しそうにそう言って、私達にお年玉を配った



おじさんが家を出てすぐ、花音はお年玉の袋を開け、中を確認している


私も部屋に戻ろうと思ったその時、持っていたお年玉が花音の手によって奪われ 袋が開いた



入っていたのは5万円


そのお札を見つめて花音が口をひらく




「なんで… なんでなの、あたしのパパなのに!

どうしてあたしはいっつもあんたより下なの?!」



そんな叫びが聞こえた後




ガンッ!




体を強く押されて肩に衝撃が走った


「いったぁ…」


近くにあったテレビ台の角で打ったらしい




「もう限界なの!

アンタのその顔見たくないの!!」


そう言って近くの花瓶を手に取った花音




やばい──────


そう思った時にはもう遅くて




ガシャーン!




私の顔の真横で、ガラスの破片が宙を舞った




< 68 / 169 >

この作品をシェア

pagetop