ありったけの愛を叫んで





「これはしばらくみんなに会えないなー…」


鏡に映る、大きな絆創膏を貼った自分の顔を見てつぶやく




"猫に引っ掻かれた"


なんて言い訳が通用しない、深い切り傷


陽人にそう言えば 「まじかよ 大丈夫か?」
なんてくらいで済みそうだけど、勘のいい悠は家で何かされたのかもって思うだろうし、
朔夜なんて、「何があった」ってまた尋問してくるだろう




とにかく、しばらくは部屋にこもっていよう…

そう思っていた時




ピリリリ、ピリリリ…


画面に表示されたのは "悠" の文字


最悪なタイミング


隠しカメラでもついてるの?

やっぱり悠ってストーカーなの?




出ないのも不自然だと思い、迷いながらも通話ボタンを押す


『もしもし美月ちゃん、元気してる?』


「あ、うん、どうしたの?」


できれば早く切りたい私はすぐに用件を聞いた



『…なんか、美月ちゃん冷たくない…?


朔夜が美月ちゃんに会えなくて、さみしーんだってさ〜』


『んな事ひと言もいってねーよ』




たった一日聞かなかっただけなのに、すごく懐かしく感じた朔夜の声が、少し遠くから聞こえる



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