ありったけの愛を叫んで






どれくらい経ったのか分からない


携帯の電源も切っているため時間も知らない




日が昇って 日が落ちて、暗くなる


目が開いて、目が閉じて、
起きた時には忘れているような夢をみる


ぼーっとした頭に浮かんでくるのはいつでも朔夜の顔だった


イラついて舌打ちする不機嫌な顔、

ブラックコーヒーを飲む大人な表情、

口角を少しだけ上げた、妖艶な笑み




自分から避けておいて、バカみたいだと思う




会いたいよ…




そう夢の中で思ったからなのか…








ブォンブォン─────…


3台のバイクの音が遠くから聴こえる


玄関の方ではおばさんの怒鳴り声


ドカドカと階段を上がってくる一人の足音…








部屋の扉が急に開き、私の方へ駆けよってくる男




ひどく悲しそうな顔をして




『美月! 美月!!』




朔夜が私を呼んでいた──────





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