ありったけの愛を叫んで

〜Side 朔夜〜

『話があるんだけど…』


弱々しくそう言った美月


やっぱりか、と思った




ここ2、3日 俺に対する態度はずっとぎこちなかった


大晦日の夜はあんなに楽しそうにはしゃいでいたのに、短期間で何があったのだろうか




思い当たるのは、あの夜 俺の正体に勘づいたのかもしれないということ


あの日は飲みすぎて油断していた


あの時俺におはようと言った美月は明らかに様子が変だった




俺の正体を知ったら、どう思うんだろうか





「美月のこと離したくねーよ…」




ホットココアを混ぜながら、そう小さく呟いた







「話しってなんだ」


つい強い口調になってしまう自分に腹が立つ



「言いたいことあんならさっさと言えよ」


俺は焦っていた


何も言わない美月にもイライラした



俺の言葉にうつむいた美月は手を握りしめ、小さく震えている




言い過ぎた…


そう、後悔した時だった





「朔夜、

私になにか隠してることあるでしょ…?」





美月の大きな瞳が俺を試すように見つめる




どう答えるべきか迷った


どう答えても、墓穴を掘ってしまう気がした


まずはどこまで知っているのか、何を知っているのか聞きたかった




「… お前… どこまで知ってんだ…?」




俺のその言葉に一瞬目を見開いた美月




「私の質問に答えてよ!!」




初めて見る、美月の怒った顔、苦しそうな叫び声




「わりぃ…」


何から話すべきか
いつか、話そうと思っていたそのいつかが今
来ている



頭の中が整理できなくて、そんな言葉しか出てこない





「帰る」




それだけ言って飛び出して行った美月を
追いかけることが出来なかった


追いかけて捕まえても、何も言うことができない気がした







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