へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目





ステージに立つ準備が整った。

ステージ袖でスタンバイしている、明梨ちゃんに目を向ける。


大丈夫? 

緊張しすぎじゃない?

顔は固まっているのに、体中震えてるよ。


「ちょっと来て」


俺は明梨ちゃんの腕をガバット掴むと、ステージ袖の奥の段ボールが積まれた陰に、明梨ちゃんを連れてきた。


「緊張してるの?」


俺の声に、口を思いっきり結んでコクリと頷いた明梨ちゃん。


やっぱり。

また一人で抱え込んでた。

俺のこと、もっと頼ってくれればいいのに。


俺は明梨ちゃんの手を掴むと、手のひらにピンクのストップウォッチを乗せた。


ストップウォッチを見つめながら、途切れ途切れのかすれ声を震わせた明梨ちゃん


「ストップウォッチ、使わないよ……。曲が始まる前に、曲紹介するし……」


「わかってるよ。これは、お守りって言ったでしょ?」


そうお守り。

明梨ちゃんがステージの上で、少しでも安心するためのね。


こんどこそ俺が守るから。

明梨ちゃんに何があっても、絶対に。
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