へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目
*
ステージに立つ準備が整った。
ステージ袖でスタンバイしている、明梨ちゃんに目を向ける。
大丈夫?
緊張しすぎじゃない?
顔は固まっているのに、体中震えてるよ。
「ちょっと来て」
俺は明梨ちゃんの腕をガバット掴むと、ステージ袖の奥の段ボールが積まれた陰に、明梨ちゃんを連れてきた。
「緊張してるの?」
俺の声に、口を思いっきり結んでコクリと頷いた明梨ちゃん。
やっぱり。
また一人で抱え込んでた。
俺のこと、もっと頼ってくれればいいのに。
俺は明梨ちゃんの手を掴むと、手のひらにピンクのストップウォッチを乗せた。
ストップウォッチを見つめながら、途切れ途切れのかすれ声を震わせた明梨ちゃん
「ストップウォッチ、使わないよ……。曲が始まる前に、曲紹介するし……」
「わかってるよ。これは、お守りって言ったでしょ?」
そうお守り。
明梨ちゃんがステージの上で、少しでも安心するためのね。
こんどこそ俺が守るから。
明梨ちゃんに何があっても、絶対に。