へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目
「何、泣いてるわけ?」
笑い声を含ませながらの
珀ちゃんの声。
『なんでもない』って伝えたいのに。
涙が止まってくれなくて
声なんて出てこない。
珀ちゃんは私の前にしゃがみ込むと
また、私の頭をポンポンとした。
「明梨、頑張ったな」
滅多に見せない、珀ちゃんの満面の笑み。
なんで今、見せるかな。
お兄ちゃんが妹を慰めるような
そんな優しい瞳を宿した珀ちゃんが
言葉を続けた。
「俺の負けだな」
負けって何のこと?
疑問の色を浮かばせ
珀ちゃんを見上げる。
「完全に俺の負け。
総長が姫に負けるって、情けねえな」
だから、私に負けたって何のこと?
落ち着いた涙をぬぐいながら
私は声を絞り出した。
「珀……ちゃん?」
「お前さ、そろそろ学習しろよな。
潤んだ瞳でお前に見つめられて
ドキッとしない男なんていねえからな」
はーっとため息をついて
あきれ顔の珀ちゃん。
話、そらさないでよ。