へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目

 珀ちゃんは恥ずかしさを隠すかのように
 私の頭をリズミカルに
 ポンポン叩きだした。


「ちょっとやめてよ。
 私の頭、木魚じゃないからね」

 
 フッと鼻で笑いながら
 私の頭を叩き続ける珀ちゃんの手を、
 私は頭の上の虫を追い払うかのように
 パタパタ跳ねのける。


「子供の頃からマジで変わんねえな。
 明梨の頭ん中」


「何それ」


「木魚って……
 もっと女子高生らしい例え
 思いつかねえのかよ」


 木魚なんて思いついたのは
 珀ちゃんのせいだからね。


 お腹を抱え、声を上げながら豪快に笑う
 珀ちゃんを見て、
 私も笑い混じりの声を出した。


「子供の頃、
 木魚叩きながら家じゅう
 走り回っていたの、珀ちゃんじゃん」


「覚えてねえし」


 珀ちゃんが、ソフトに私を睨んでいる。


 良かった。
 いつもの珀ちゃんに戻ってくれて。


「マジで叩きやすい。明梨の頭」


「だから、木魚禁止だってば!!」


 冗談っぽい笑みを浮かべて
 私の頭を叩き続ける珀ちゃんの手を、
「やめてよね」と笑いながら掴んだとき、
 弱々しい声が私の耳に届いた。


「明梨……ちゃん?」


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