へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目
明梨ちゃんにムカついているのか。
珀斗くんに勝てない自分に
ムカついているのかわからない。
わからなくて。
頭の中がドロドロした
マグマみたいなものがフツフツ
煮えたぎっていて。
沸き上がる怒りを鎮めることなんて
できなくて。
俺は明梨ちゃんを無視するかのように
視線を床に落としたまま
言葉を吐き捨てた。
「来なきゃよかった。
明梨ちゃんのところなんて」
「え?」
「戻るから。ファンの子たちのところに」
初めてかも。
明梨ちゃんに対して
こんなに怒りを覚えるなんて。
今はここにいたくない。
明梨ちゃんの顔なんて見ていたくない。
だってその顔を見たら
珀斗くんに微笑んでいる顔が
浮かんじゃうから。
走り去ろうとして明梨ちゃんに
背中を向けた時、
俺の服が引っ張られた。
振り返ると
弱気な瞳をゆらっと揺らした
明梨ちゃんが、
俺の瞳をまっすぐに見つめていた。
「教えて……
何がダメだった? 私……」
まだ気づいてないの?
珀斗くんとの距離感、近すぎだって。
幼馴染の関係
明らかに超えてるよね?
それとも、暴走族の総長と姫の関係って
カップルみたいに密接なの?
「珀斗くんと、仲良すぎじゃない?」
「ただの……幼馴染だよ……」
幼馴染って言葉
都合よく使っているよね?
これからも俺が
二人の関係に嫉妬するたびに
出てくるんでしょ?
『幼馴染だから』って。
俺。その言葉。大嫌いだよ。
もう二度と
明梨ちゃんの口から聞きたくない。