へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目
ピアノの音が消えていく。
歌い終えた雅くんが、座ったまま私を優しく見つめた。
「俺さ、ずっと桃瀬さんに言いたかったことがあったんだ」
「なに?」
「アミュレットの、一番のファンでいてくれてありがとう」
「え?」
「俺たちのライブ中、本当に楽しそうに一緒に歌ってくれてたでしょ? ステージ袖で。俺たちのライブを心から楽しんでくれているひとがこんな身近にいるって、嬉しかったんだ」
「それはアミュのみんなが人を楽しませる天才で、ライブのたびに、魅惑の世界に私を引きずり込んでくれていたからで……」
「桃瀬さんは、自分の司会が俺たちのライブを盛り下げるって言ったでしょ?」
「うん」
「それは間違いだよ。桃瀬さん以上に、俺たちをやる気にさせてくれた司会者さんは、誰一人いないんだから」
嬉しい……
あの頃の私の司会を、そんな風に評価してくれていたなんて。