忘却ラブシック ~あまのじゃくな君には騙されません~
緊張の余り、息が詰まる。沈黙が耳に痛い。
喜びが沸々と体の奥から湧き上がり、水中で溺れているような感覚に苛まれる。油断したら、涙が溢れてしまいそうだった。
絶対に、そう。
最初は暗がりで直ぐに気付かなかったけど、至近距離で顔を合わせた時。目が合ったその瞬間、言葉では言い表せない程の衝撃が走った。
それに、私の呼び掛けに対して少しでも変わった反応を見せた事が、何よりの証拠だ。
心臓は今にも破れそうな位、激しく高鳴っていた。
「本物のハルくん、だよね……?」
もう一度、本人に確認の意を込めて呟いて彼の前髪をじっと見詰めてみれば、怜悧に伏せられた瞳が私を射抜く。
ああ、何処からどう見てもハルくんだ……。
例え中身が変わろうとも、面影の残る容姿は欺けない。