俺から逃げられると思うなよ
「行こうぜ」



無理やり腕を引っ張られる。

女の私の力は、男たちの前だと弱すぎて。

引きずられるように、どこかへ連れて行かれてしまう。

こんなところで時間使っている場合じゃないのに。



「待ってください! 人探しているので離してください!」

「あ?」



睨まれる。

怖い、怖いよ。



「探している人がいるのでっ」

「だからなんなんだよ」

「離してっ」



つかまれた腕に力が込められる。



「いたっ」



ぐいぐい引っ張る男と、抵抗する私。

助けを求めようとすれ違う人たちに視線を向けるが、知らないフリをされる。


助けて。



「涼……っ」
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