俺から逃げられると思うなよ
「神崎くん」

「ん?」



私は神崎くんのシャツをきゅっと握る。



「助けてくれてありがとう」

「ん」



でも。


と、小さく神崎くんが呟いた。



「茜は涼の名前、呼んでた」



……あ。


涼を探していたから、思わず涼の名前を呼んでいたことを思い出す。



「俺より……」

「ん?」

「いや。なんでもない」




神崎くんがなにを言おうとしたのかは分からないけど。

助けてくれたのは神崎くんで。

神崎くんがいなかったら、私どうなっていたか分からなかった。



「……ありがとう」



来てくれて嬉しかったよ。
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